これは、小学校に通っていた頃の話です。たしか3年生か4年生ころだったと思いますが、非常に不思議な体験でした。記憶違いかもしれませんし、夢だったのかもしれませんが、小さい時の原体験として、今も記憶から消えないでいます。

当時私は祖父を亡くしたばかりで、「人が死ぬ」ということを初めて意識しだしたころであり、かといって祖父はかなり離れた場所で亡くなったので、お通夜や葬式の情景を日常生活に引きずっているような感覚がありませんでした。ただ、なんとなくではありますが、「人が死ぬことによって、自分が知らないような未知の入口が開いて、そこから人と霊の出入りが始まるのではないか」といった妄想が頭から離れず、祖父が亡くなったことで、「その入口が開いてしまっているのではないか」という感覚を持っていました。そんなある日のことです。

その日はいつもどおり学校に行って、帰りには友人たちと当時(今もですが)はやっていた心霊写真の本などを見て盛り上がったりして、帰宅しました。その日 は家には誰もおらず、「母はどこかにでかけているのかな」ぐらいに思い、本を読んだりお菓子を食べたりして、ぶらぶら時間をつぶしていたのです。

そ して、電話がありました。とってみましたが、無言電話でした。

「なーんだ」という感じですぐ切りましたが、しばらくしてまた電話がかかってきたのです。次 も無言電話でした。なんとなく不気味に思い、自宅の家の鍵が閉まっているかどうかを確認しにいきました。きっちりしまっていたので安心し、また部屋に戻 り、あまり怖いことを考えないようにと、なるべくくだらない漫画などを選んで、読むことに集中して過ごしました。

いつもは夕方には帰宅す る母が、帰宅しません。2、3時間後には父も帰宅するはずなのですが、その日は非常に不安な気持ちで待ちきれません。ここでもう一度電話がありましたが、 やはり無言電話です。

流石に怖くなった私は、家を出て近くに住む親しい知り合いのおばさんの家に出かけました。呼び鈴をおしておばさんはでてきてくれたの ですが、相手の顔や口が動いている様はわかるのだけれども、私には何も聞こえないのです。声もだしたいのに、出ないのです。(出ていたのかもしれません が、自分聞こえません。)パニックに近い状態になって、私は転げるように自宅に戻りました。

玄関に入ると、帰宅していた母が出てきましたが、母も同じ状態 です。何も聞こえませんし、何も通じません。音は聞こえているのですが、人との会話ができない、という感覚です。私は例の「人と霊が行き来する入口が空 きっぱなしであることが原因に違いない!」と考えて、本当に怖くてたまりませんでした。

その時父も帰宅してきましたが、なんと父も同じ状態でした。誰も彼も、景色になってしまったのです。

その後の数時間は、あまり覚えていません。

翌朝目が覚めたときは、普通に布団の中でした。両親による と、昨夜はわけのわからないことをわめいていたが、その後食事もとって、寝たというのです。疲れていたのではないか、とも言っています。電話も、偶然の間違い電話だったのかもしれません。真相はわかりませんが、私には今でもなんらかの力が働いていたように思えてなりません。