私は小学生から剣道をしていました。
進学しても社会人になって現在でもしています。
丁度社会人になって1年経った頃です。
就職し仕事にも慣れ、剣道にも力を入れて生き生きと過ごしていました。
そんな中、剣道の師匠から、「剣道ばかりでなく様々な事にも挑戦しなくてはいけない。
君は見込みもあるので私の知りあいが合気道をやっているのでできる限り並行でやっていくと君の人生が有意義になる。」と言われました。


最初は気が進みませんでした。
大学のサークルでも体験で合気道はしたことがありました。
が師匠の言うこともあるし、時間にも余裕が当時はあったのでやってみることにしました。
合気道も稽古してみると非常に楽しく、あっという間に進級していきました。
そして、数年がたち私も20代後半になろうとした時でした。
合気道で初段の手前まで来ました。
ある日、合気道の先生Wさんから、「秋に合気道の昇段審査がある。
君も合格できるとは思うが確実にしたいから夏に合宿しよう。
」と言われました。
私は決意し、夏休みに2泊3日でS県のとある合宿場に行きました。
駅から車で10分。
比較的街場でしたが、周りは草木に溢れて、そこは河原が近くにあるそんなに古くもない建物でした。
体育館みたいな場所が道場になっていて流派の他の支部の人達と練習しました。
合宿はもう夏真っ盛りで熱く、汗ダラダラ。
胴着も汗まみれで稽古が終わったら洗濯し干してました。
料理も近くの地元の方が作ってくれて美味しかったです。
ですが、夜でも30度を超えたのですが、何故か合宿場所はひんやりした空気で肌寒かったです。
料理を作ってくれたおばちゃんが、「あんたら。
終わったらなるだけ直ぐ寝る事お勧めするよ。
何か見るかもしれないから。
」と訳の分からない事を言われました。
最初は何言ってるんだろうと不思議でした。
寒さも河原が近くにあるからだろうと思ってました。
その日の夜です。
深夜1時くらいだったかと思います。
食事で酒盛りし、風呂に入って直ぐ9時前に私は就寝してました。
ですが小便に行きたくなり二人部屋でしたが部屋を出てトイレに行きました。
廊下は小さな豆電球が何個かついていました。
ですが暗かったです。
丁度トイレに行く時右側の廊下の窓ガラスには河原が見えました。
寝ぼけと酔いがありましたが、比較的スッキリしてました。
トイレを終え、部屋に戻る時です。
何となく河原に視線が行きました。
すると、河原の岩場に髪の長い青白い女性が見えました。
顔は黒い長い髪で見えないけど右手と胴体だけは見えましたがそれ以外は存在してませんでした。
私は目が覚め怖くなりダッシュで部屋に帰り、布団に包まり何も見なかったと何度も言い聞かせていつの間にか寝てました。
次の日の朝です。
起きてもう合気道の稽古でした。
この日も熱く汗ダラダラで脱水症状になりそうになりながらも稽古してました。
審査に合格したいため耐えました。
この日もハードな練習でした。
次の日が最終日ということもありました。
同室や他の方にもお酒を飲もうと言われましたが、クタクタで上手に断り部屋に帰り直ぐに寝ました。
深夜になり、ぐっすり寝ていたのですが、急に寒く息苦しくなりました。
目を開けようとしましたが中々開きません。
代わりに自分の体の上が誰かが乗っかっているような重さがあるのです。
苦しくなんだろうと感じてました。
が簡単に体を動かせません。
動きたいけど動けない。
何なんだ一体?と思っていたら何とか目が開きました。
すると私の上に華奢な老人が青白い顔でじっと見てるのです。
無表情でした。
「うわぁぁ!!」私は叫びました。
すると一緒の部屋の隣のベットのRさんが飛び起きて「どうした?!」と言ってくれました。
すると私の上に居たはずの老人は居ませんでした。
それから現れませんでしたがもう眠れませんでした。
最終日は、朝起きたら合気道の稽古はなく、昇段審査の対策や傾向などの座学が一時間程してバスに乗り帰宅というプランでした。
私は朝食堂で、ご飯を作ってくれた初日に直ぐ寝なさいと言ったおばちゃんを見つけ、こっそりと自分の起きたことを話しました。
おばちゃんは、「見ちゃったの。
」と少し青ざめた表情で話し始めました。
昔、この地元に住んでいた髪の長くて長身の女性がいたそうです。
ですが、戦争で空襲が起き、B29が焼夷弾を落としました。
女性は河原に逃げました。
ですが、運悪く焼夷弾が河原に何個か落ち数十人の方が犠牲となったそうです。
女性はその際直撃し胴から下と左腕全部が焼けて全くなかった死体だったそうです。
それと老人は、この合宿所を作った方で、地元の資産家で合気道が好きで建てました。
ですが、ある冬の日、合宿所の窓拭きをしていたら謝って落ちて頭を打って死んだそうです。
それから合宿に来た際や地元の人も見るという出来事が起きるそうです。
私はぞっと背筋が寒くなりました。
それからバスに乗り帰りましたが中々落ち着かず、しばらくその事が頭に離れませんでした。
特に危害を加えられた訳ではありませんでしたが恐怖でした。
ですが、合宿のお蔭か合気道の審査には無事合格し初段を獲得できました。
その後結婚や仕事生活で合気道は止めました。
あの合宿所も近くの火災と水害、老朽化と維持の困難で取り壊しとなったそうです。
後から聞いた話ですが、あの時私と一緒に合宿に行った数人もそんな光景や体験をしたそうです。
今数十年経っても思いますが世の中には人智の超えた考えられない事も起き体験もすることがあるのだなと思っています。