もう20年くらい前になります。転勤をきっかけに初めて一人暮らしを始めました。
当時はインターネットもなくいきなり引っ越し先の不動産屋に訪ねていきアパートを探すという手段しかありませんでした。
そのせいか、なかなか当たりの物件に出会うことはありませんでした。
私もその一人で、一日だけ不動産屋に三か所ばかり案内をしてもらい決めなくてはいけない状況でした。
独身のクセに荷物の多かった私は部屋数の多いアパートを希望したので不動産屋が案内してくれたのは変なところばかりでした。
結局、部屋数と家賃とで妥協して決めたアパートの玄関前に墓地があるという立地状況でした。
私自身霊感はなく、その類の心霊体験も全然信用しない人間でしたので、アパートの前に何が建っていようが関係ない考えでした。

アパートの住人も変な入居者もおらず快適な環境のように感じました。
そして初めての夏を迎えたある夜のことでした。
田舎のアパートだったため一階でしたが、普段は網戸のまま寝る習慣がついていました。
その夜も同様に網戸にしたまま、窓際のベッドでうとうとと寝かけていました。
熟睡をするタイプではないので、いつも人の気配などで目が覚めてしまいます。
うとうとしてどのくらいたったころでしょうか、なにかの気配で眠気がなくなってしまいました。
しかし、目が開けることが出来ないのです。

体を動かすこともできなくなっていました。「これがうわさに聞く金縛りというやつか?」と考えたりもしましたが、目が開かない、体が動かないどうしようと考えているうちに
目が覚めた、原因と思われる気配が意外と近くにいる感覚を覚えました。
金縛りの状態の割には感覚だけがものすごく研ぎ澄まされているのがわかりました。
なにかがアパート伝いに自室の網戸へ近づいてきているのです。
今まで体験したことのないものすごく恐怖です。

全身が汗が吹き出し、体も動きません確実に気配だけが大きくなってきました。
そしてその気配は自室の網戸の前で立ち止まりました。
見えていないのに感覚だけで、そのなにかと自分との距離が感じ取れます。

「行ってくれ。行ってくれ。」と願いましたが、その気配は網戸をカラカラと開けてしまいました。
網戸が開くとその気配は、「トンッ」と軽い足音を立てて部屋の中に入り私のベッドの足元にいます。
一瞬「ネコ?」と考えた瞬間でした。その気配が、ばっと飛び上がり寝ている私の胸の上に ドンと落ちてきました。ネコではないでかさです。
その瞬間に金縛りが解けて私は大声を上げながら飛び起きていました。
もちろん部屋には猫などいませんでした。
後日、そういう気配の見える子に見てもらうとどうも私の部屋が通り道になっていたそうです。