私が、結婚当初に暮らしていた、マンションの隣の家はいつでも空き家でした。
場所がいいので人は入るのですが、何故かみんな、半年もせずに出ていってしまうのです。
家自体も、古い家ですが、広さもあり、大きな駐車スペースもあります。

私達夫婦が入居した部屋は、その空き家の窓と、うちの窓が隣接するくらい近い位置にありました。
入居して暫くすると、空き家のはずの隣の家から、物音や、人が歩く音や、壁を叩く音、ある時は男性(そう聞こえた)の話し声が聞こえる事に気がつきました。
私は、その空き家の持ち主が、様子を見に来たのだろう、とか、誰か借りたい人が見に来たのだろう、くらいに思っていたのですが、ハッキリと2人く らいで話をしている声が聞こえていて、何気なく隣接している窓を開けたら、無人の部屋が窓ガラス越しに見えただけで、確かにこの窓越しに声が聞こえたのだ が、と思い、ドアから外に出て、身を乗り出して隣の家の出入り口と駐車スペースを見るのですが、人が訪ねて来た形跡すらなくて、きつねにつままれたような 気分になりました。

それから、隣の家に隣接している窓を、誰かが叩くような音がするようになり、怖かったので、磨りガラスの窓だったのですが、カーテンをかけ、さらにその前にタンスを設置し、もうそこの窓は開けない事にしました。
ある日私が仕事から帰ると、隣の家に引っ越し業者のトラックが停まっていて、みんなで荷物を家に運び込んでいるところでした。

引っ越して来た人達は、若い夫婦で、子供が2人いました。
彼らがその家に入居して、1週間くらいで玄関の前に大きな盛り塩がされました。
夫が見つけて、
「おい、何か凄いでっかい盛り塩がされているけど、やっぱり隣の家は何かあるぞ」
と、興奮気味に私に言いました。

今から思えば、家族4人が入っているわりに、生活音が一切無かったなあ、と思います。
結局その一家は、1ヶ月程でその家を出てしまい、また、その家の駐車スペースに、借家、と書かれた札が立ちました。

背筋が寒くなりました。
私の知り合いの人を、私達の部屋に招待した時の事です。

帰り際、その家の前を通りましたが、彼女は無言で前だけを見て歩いて行きましたが、後から私が、
「実はあの家、何か変なんだよ」と言うと、ああ、という顔をして、
「で しょうね。そうなんだろうと思ったわ。だって、あの家の、駐車スペースに向いてる窓があったでしょ?あの窓、カーテンがかかっていたでしょ?前の住人が置いて行ったのか、ずっとかかっていたのかは知らないけど、カーテンの合わせ目の隙間から、お婆さんだと思うけど、外を見てるから、絶対目を合わせたらいけないと思って、前だけを向いて歩いていたのよ。あなたも、気を付けた方がいいわよ」
と言うんです。
私は、彼女を送り届けた後、1人でまた今来た道を戻らないといけないんだけど!と思うと、少し彼女を恨めしく思いました。

それから、次の夫婦が入るまで、3ヶ月くらいかかりましたが、その間も物音や話し声、重い荷物が落ちるような音が、時折聞こえて来ました。

3ヶ月後、その夫婦が入居して、それから2~3ヶ月後に、私達が他の場所に家を見つけて、引っ越しましたが、その頃には、また、駐車スペースに借家札が立っていましたので、やはり彼等も長く住み続けるのは難しかったのだなあ、と思いました。

引っ越して3年経って、夫が、仕事でその家の前を通った、と言っていました。
相変わらず、借家札が立っていた、と言いましたが、前よりも家のまわりの空気がどんよりとよどんでいるような気がした、と言っていました。
「まだ借り手がつかないのだなあ」
と思います。原因は何か分かりませんが、幽霊屋敷だったようです。