私が金縛りにあうようになったのは高校生の時からでした。はじめて遭遇してから回数を重ねるごとに金縛り中の体験はさまざまなものになり、最近ではすっかり怖さもなくなってしまいました。そしてどうせならメッセージ性を探してみようと思いつき、金縛り体験を楽しみにするようになったのです。
それは高校3年生のときの、ある日の金縛りのメッセージを無視したがために、その後の人生がなかなかうまくいかなかったと感じたことから始まりま した。その日の金縛りでは、視界はただ不明瞭で何となく自分のベッドなのですが、いきなり布団ごと体が宙に浮き、男とも女ともつかない声で、「人のために なりなさい。」と何度も頭の中で響き渡りました。

目覚めてから母親にそのことを告げると、スピリチュアル好きの母親は何かのお告げかもしれないと言って行 きつけの霊能者のところへ相談へ行きました。するとその霊能者は「そんなことは思い込みだから、勉学に励むように。」と一蹴したため、私もまあそんなとこ ろだろうと、それまでと変わりなく生活することにしました。

その後の私は確実と言われた大学受検にことごとく失敗し、やむなく行った大学も中退。男にだまされ未婚の母になったり、無実の罪で警察に呼ばれたために仕事を失う、その後ことごとく働いた会社がつぶれるなど、本当にさんざんな目にあいました。

ほ どなく母が他界し、父は新しい女性と暮らすために家を出て、それを許せない弟は音信不通など、もう私のストレスは極度まで達してしまって、原因不明の顔面 神経痛に悩まされるようになりました。その痛みといったらこの世のものとは思えず、医者にもらった鎮痛剤も一切きかないもので、寝ころぶと激痛が走り、ど こを押さえても痛いために転げまわります。全く痛みはおさまることなく、眠れずに座位で過ごす毎日にもう辟易し、疲れ果て、「もう殺してくれとつぶやいて ソファにただかけて耐えるだけしかできることはなかったのです。

ただ茫然と痛みに耐えていると、さすがに1週間眠っていなかったせいか半ば気絶気味に眠ってしまったようでした。しかし体は寝ているけど精神は起きている感覚、「ああ、金縛りか。疲れているんだな。」と感じていたところ、ふ わっと懐かしい香りがしました。

私はすぐにお母さんだと気づき、姿は見えないけど「お母さん」と呼んでみました。すると私の両手を、引っ張り上げる手が あって、私はそれもお母さんの手だと直感しました。

感覚がまるでお母さんなのです。私は引っ張られる手に身を任せ、ふと後ろを振り返るとしかめっ面をして ソファにかけたまま寝ている、さっきまでの私がよく見えました。

部屋を見渡すとテレビもついたままで、確かに時間もこんなものだろうというかんじだった し、「これが体外離脱かあ。お母さんが迎えに来たんだな。」と死を予感しましたが、不思議と怖くありませんでした。むしろ心地よく、その手は私を引き寄せ 抱きしめたのです。

ふわっとお母さんの懐かしい香りがして何とも幸せな時間でした。それからほどなくして、お母さんの声で「「大丈夫、大丈夫。」と耳元で ささやかれるがはっきり聞こえ、私の視界は急に不明瞭になり、気づいたらソファの上で目覚めていたのです。

目が覚めた後もお母さんの感覚やにおいははっきりと残っていました。その感覚に浸っていると、驚くことに目覚めてから全く顔面の痛みがなくなってしまっていたのです。私はその場で泣き崩れてしまいました。

それからというもの、金縛りにあった時に誰かに語りかけられたり、体を抜けてもらったメッセージにはほとんど意味があることばかりでした。私は何てそういう声を粗末にしながら生きてきたのだろうと反省しています。