これは私が小学生のころの話です。
私が通っていた小学校の裏手には雑木林が広がっていました。
『危ないので近づかないように』と先生たちからは言われていたのですが、放課後になるとよく友達と一緒にいろんな遊びをしていました。
雑木林の中は枝や葉が生い茂っていて暗く、木の幹で死角になっている場所がたくさんあるので特にかくれんぼをするにはうってつけでした。

その日も私たちは放課後に先生たちに内緒のまま雑木林の中でかくれんぼをしていました。

私がどこに隠れようかと雑木林の中を走り回っていたときのこと、ひときわ幹が太くて隠れるのにちょうどよさそうな木が見つかりました。私はその木の陰に隠れて、鬼が「もういいかい」と言った声に「もういいよ」と答えました。

思った通り、その木の影は見つかりにくく、雑木林のあちこちで「見ぃつけた」という声が聞こえるのを私はじっと身を縮めて聞いていました。

そのときかくれんぼに参加していたのは十人で、既に九回「見ぃつけた」という声が聞こえました。

ですが、鬼は私の居場所だけはなかなか見つけることができないまま、少しずつ時間が過ぎて行きました。
そして、そろそろ日が傾いてきて、雑木林に夕陽が差し込み始めたころのことです。

木々が夕陽で赤く染まっている光景を見て私は何だか心細くなって、そろそろ姿を現そうかと思っていました。
ですが、そのとき、遠くから鬼が「あ、見ぃつけた!」という声が聞こえてきたのです。

最初は鬼がただふざけているだけかと思っていましたが、「そろそろ帰ろっか」「そうだね、帰ろうよ」という声が聞こえてきて、みんなの足音が少しずつ遠ざかっていきました。

どうやら、本当に私を置いて帰ろうとしているようでした。
私は慌てて、足音の方向へと走りだしました。
ですが、日が落ちかけていた雑木林の中は暗く、木の根につまずいて何度も転んでしまいました。

しかも、何故だかいつまで走っても雑木林の外に出られず、友達たちの足音と話し声はどんどん遠ざかっていきました。

ついに友達の声が聞こえなくなったあと、私はひどく怖くなって、暗い雑木林の中で一人で泣きわめいていました。

長い間そうやって泣きわめいているうちに、たまたま見回りに来た小学校の先生がその泣き声を聞きつけて、私を保護してくれました。

後日、事情を聞いた先生が私と一緒に遊んでいた友達たちみんなを呼び出して、
「友達を一人だけ置いていくなんてひどいじゃないか」
と叱りました。

ですが、友達たちはみんな、口を揃えて、
「でも、確かに帰るときは十人いたんだ」
と言っていました。

それに、そもそもその雑木林は大して広くはなく、本来ならいくら真っ暗でもまっすぐ走り続けていれば出られる程度のものでした。

僕も友達たちも、みんな狐につままれたような不思議な表情をしていました。
すると、先生は
「もしかしたら幽霊かもな」
と、ぽつりと言って、次のようなことを話してくれました。

その雑木林では、昔かくれんぼをしていて、一人だけ木の枝に上って隠れていて、運悪く足を滑らせて枝から落ち、死んでしまった子供がいたのだそうです。
そもそも雑木林が立ち入り禁止になったのも、そんな事故があったからだったらしいです。

もしかしたら、その子供の幽霊が出てきたのかもしれません。

それから次の日、僕は自分が隠れたあの幹の太い木を雑木林の中から探そうとしましたが、不思議とその木は見つかりませんでした。

それからというもの、僕たちは少しずつ雑木林に近寄ることがなくなっていき、いつも放課後にしていたかくれんぼや鬼ごっこも自然とやらなくなりました。

もしもあの雑木林が今も残っていたら、また、死んだ子供の幽霊がこっそりと子供たちのかくれんぼに混じっているのかもしれません。